概要
マドロミはかなたそとトワさんが歌う楽曲である.この楽曲中には暗号らしきものが含まれており,作詞者の傾向から換字式暗号と推定される.本記事ではマドロミに含まれる暗号文の完全解読を行う.
序論
最近は僕の中でかなたそがアツい.最近は何故かわからないが忙しい気がしているので,頻繁にかなたその配信やら動画やらニュースをチェックできているわけではないのだが,最近面白いものを見つけたのでそれについて考えたいと思う.それがこちら.換字暗号である.
Twitterで「マドロミ 暗号」と検索しても誰のツイートも出てこないので,どうやら誰も暗号に興味が無いようである.いやわかる.かなたそとトワさんが歌ってたらみんな暗号より歌の方が気になる.
せっかく暗号があるのに誰も解かないのはもったいない上,OW-COA安全ですらない解読がお手軽な古典暗号を使ってくれたので解読していこうと思う.
前提知識
マドロミの作詞は 砂守岳央 さんが担当された.彼は実はゼロの足跡も作詞されている.ゼロの足跡は全世界の暗号オタクのわためいとを熱狂させた換字暗号を含んだ角巻わためさんの曲である.ホロライブ関連楽曲だけですでに2曲に換字暗号を含ませた砂守岳央さんはきっと暗号が好きに違いない.ゼロの足跡の暗号については以下を参照してほしい.
また,マドロミの暗号文及び歌詞の全文は法律上このブログには掲載できないので,上の動画を見るなどして得て欲しい.また,マドロミに含まれている暗号文は歌として発音する必要性から子音と母音がペアになっており,さらに子音は子音に,母音は母音へと移すような暗号になっていることは注目に値する.
解読
換字暗号の解読方法の定番と言えば頻度分析だが,マドロミの暗号の解読においては頻度分析は正直役に立たなかった.そんなものよりずっと重要だったのは子音と母音の並び方と閃きであった.
最初に解読できたのは暗号文 だった.この暗号文は4音あるが,母音も子音も3つしか含まれていなかった.さらに偶然にも はこの楽曲のタイトルである「マドロミ」に対応する暗号文だった.一気に6文字も解読に成功し,このうち母音はを解読できたので,残った母音 は消去法でも選べた.復号をとしてしまうと,暗号文の に対応する平文が となり,最初の3文字に「詰まる」くらいしか対応する日本語を見つけられなかったため,これを棄却し,とした.ここに母音の対応を得た.
暗号文 | |||||
---|---|---|---|---|---|
平文 |
母音が対応すればもう適当に母音だけを読んでいても何かしら思いつく.は「マドロミ」の直後にあり,部分的に解読するととなる.最初の四文字には「おやすみ」しか入らない気がしてくる.この時点でかなりの部分が解読できているので残りの部分の解読は益々簡単になる.
暗号文は現時点でと解読されており,どう考えても「安らかに」に対応する.
続けて暗号文は「永久に」に対応する.
あとは偏見と独断でとすれば全て解読が完了する.
解読結果は 「おやすみ わがこよ とわに やすらかに」 「まどろみ おやすみ かわいいこ ねむれ ねむれ ねむれ ひとみをとじて まどろみ おやすみ かわいいこ ねむれ ねむれ ねむれ やすらかに」 となる.
解読に役立つツール
普通なら頻度分析が役に立つが,この暗号に限っては
- 暗号文のサンプルが非常に少ない
- (おそらく意図的に) 平文と暗号文の連接頻度に強い関連がない
などの理由から頻度分析があまり役に立たなかった.例えば,平文中に最も出てくる2文字の組み合わせ「おち」は暗号文中には一度も出てこない.故に,この暗号の解読に一番役に立ったのはvimだった.vimをただのテキストエディタと侮ることなかれ.正規表現で文字を検索できるので,できることがかなり広がる.この章ではvimがどのように役に立ったかを軽く紹介する.
本暗号で最初に解読できたのは の部分だった.これをどのようにして見つけたかを説明するにはvimと正規表現が欠かせない.まずは過去の日本語暗号文の解読経験から母音が判明すれば解読が非常にやりやすくなることは分かっていた.そのため,まずは母音の対応を見つけることに専念した.vimで平文歌詞をローマ字に書き下し,vimのノーマルモードで に対応する可能性のある以下の文字のパターンを順に入力して対応する母音を探す.
/.a.i.i.u
/.a.i.i.e
/.a.i.i.o
/.a.o.o.i
/.a.o.o.i
を入力した時点でローマ字に書き下した平文歌詞から と対応に矛盾がないmadoromi
を入手できる.ここで母音3文字の対応を得られるのであとは勘と経験に任せよう.
暗号文の異なる部分に着目すれば,全く違う対応を得て惑わされたかもしれない.例えば,暗号文 に着目した場合はこれが平文「わたしと」に対応するように思えてしまう.これは異なる対応なのでいずれ間違いだと気づくが,直ちに誤りだとは分からない.時間がたってから暗号文中の を見つけ,それが「わ」でも「を」でもありえないことに絶望しながら対応表を書きなおす羽目になった.